今回は原料肉の管理問題です。ここはひき肉に限定をして話をしましょう。
スーパーマルエツのひき肉製造は、冷凍状態の原料肉を仕入れ、半解凍状態にしたうえで加工し出荷されています。なぜ半解凍状態で加工するかというと、完全解凍状態では加工機械が正常に作動しないからです。そこで冷凍状態の原料肉を仕入れ、冷蔵庫に移して解凍を始め、半解凍状態になってから加工工程に回すわけです。
ところが夏になると、この冷凍指定原料肉のうち多い時には日常的に2~3割ほどがほぼ解凍状態で納品されます。輸送トラックの温度管理に問題があると思われますが、それ以前の工程の温度管理に関しては明らかではありません。
ひき肉原料肉は密封されていないため、肉汁が梱包材にあふれ、梱包材の外まで染み出してくるわけです。当然のことながらこのような状態で納品された原料肉は、納品業者に返品されなければなりません。そして再度冷凍状態の正常な原料肉を納品させなければなりません。
しかしマルエツの生肉製造工場ではそのまま納品を受け入れます。そして加工に適する状態にするために冷凍庫にいったん保管して、その後再び半解凍状態にして製造工程に投入します。
ひき肉というものは、どの生産業者もいわゆるくず肉の寄せ集めが原料です。スーパーマルエツでも一部については他の食肉製造工程から出た切れ端肉などをひき肉原料として使用しています。それらの肉は解凍状態ですから、上述にあるような、「冷凍指定肉が解凍状態で納品される」というのは、スーパーマルエツにとっては本質的な問題ではないのかもしれません。
しかし商品として店頭に並ぶとどうでしょうか。スーパーマルエツはひき肉については、大半の原料肉が「冷凍で納品され、加工直前に解凍される」という前提で全ての工程が成立しており、消費期限等の表記もその前提で付されているわけです。それなのに実際には「いつから解凍状態にあったのか、温度管理が適正になされていたのかが把握できない密封されていない解凍肉」を使用してひき肉が製造されていることになります。
このことが問題になるのは夏です。夏というのは、消費者は購入後に帰宅するまで購入品が夏の気温にさらされ、帰宅後に保管する冷蔵庫も内容物が多くなり温度管理が適正でない状態が多くなります。
さらに夏は、梅雨に引き続き体調を崩すことが多くなります。特に病人、老人、幼児はその傾向が強く現れます。その結果、これらの人は予想外に体力が低下しており、抵抗力が弱まっている状態になります。
ですから夏という季節は、食品管理に特に気を使わなければならない環境にあります。飲食店も同様ですが、飲食店は調理してその場で消費されるので実は危険性はあまり高くありません。食中毒が発生する飲食店というのは、誰が見てもはっきりわかるほど、よほど管理に問題がある店舗です。しかしスーパーは購入後の時間経過が長く、より一層の配慮と注意が必要になります。
この原料肉の温度管理問題は、スーパーマルエツの生肉製造工場内では頻繫に指摘されているにもかかわらず、「夏だから仕方ない」「大したことではない」などと言って対処は全く行われません。上述した通り、夏のスーパーの商品というのは特に温度管理に気を配らなければならないのですが、スーパーマルエツでは逆になっています。しかもこれは正規職員、役職員が組織的に行っており、生肉製造工場の職員はスーパーマルエツの店舗出身者も少なくないことから、スーパーマルエツの企業体質そのものの問題と考えるべきでしょう。
当然のことながらスーパーマルエツはすでにこのブログを見て調査をしているようですが、「消費者のおかれた立場、生活状況を考えて商品を販売する」という当たり前のことができていないようです。私の企業分析の経験からすると、前回の記事(スーパーマルエツの生肉製造の不正②)も含めて、一見すると容易に改善できそうに見えても実際に「業務として」改善を立案実行するのは、残念ながら現在のスーパーマルエツにはほとんど不可能と思われます。コストの問題ではありません。つまり改善したとしてもそれは一時的なものにとどまり、時間経過とともに再び元に戻ることになるでしょう。企業体質から生じる問題というものはそれほど根深く、根絶するのが難しいものです。
そしてスーパーマルエツの企業体質を考えるうえで焦点をあてるべき最大の問題は、これらの不適正状態は消費者から見えない部分であるために、その改善状態も見えないという点にあります。どんなにスーパーマルエツが「改善した」と言ったところで、それを裏付けるものは消費者には見えないために、消費者がスーパーマルエツを信用することができないということです。つまりこの問題に関して、今後スーパーマルエツは消費者に対して言い訳の方法が存在しません。この事実は、消費者が他のスーパーを選択するようになるなど、消費行動の変更をするには十分な理由となります。スーパーマルエツが自らにとっての事件の重大さを理解していないことが、この事件の内容から容易に判断できます。パワハラ、労災、隠蔽といった不正が日常的に行われるのも当然のことと考えるべきでしょう。